桜界逸史

2・向日葵
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昨日の天気からは考えられないほどの土砂降りだった。

車から降りて、一般の家より、明らかに大きい門の前に立つ。

来客者専用の門だ。

思っていたよりも天気が荒れたので、雨具を持って行くという報告が大いに役に立っている。

『氏名ト国名ヲ述ベ、身分ヲ証明スル物ヲ提示シテ下サイ』

門の電子パネルの声に従って名前と国名を述べた後、国家軍事同盟の身分証明書をパネルの横にあるカメラにかざした。

桜界国の技術には来るたびに驚かされる。

銀の基地本部に来るのは初めてだったが、この操作は事前に教えてもらっていたので間違うことも無く、門はあっさりと開いた。

そのまま中に入って辺りを見渡す。

すると、少し先の人工的に植えられたであろう桜の木のそばに、傘をさして立っている人影が目に入った。

「長旅ご苦労さん、統虎(とうこ)」

ニッと笑いかけた志國の代わり映えしない姿に、自然に笑い返す。

「久しぶりだな、東(あずま)の志國。元気にしとったか?」

「あぁ、部下の世話が大変だけどな。何とかやってるよ」

言いながら肩をすくめた志國に、
統虎は短い銀髪を揺らしながらククッと喉の奥で笑った。

「おい、嘘をつくな。お前は世話をされる側であろう?」

そんな統虎の茶化しに、志國はゲッとあからさまにイヤな顔をする。

「うるせぇ、これでも一応気にしてんだからな。どうせ俺にリーダーは向いてねぇよ」

拗ねたようにムスッと顔をしかめる志國。

統虎はますます喉を鳴らし、笑ったまま言った。

「そういうことじゃない。お前はリーダーとして、立派にやっとるだろうよ」

「何でそう思う…?」

「今日だって雨の報告はかなり助かった。俺は他国どころか自国の気象状態もよめんからな」

言って統虎は「感謝している」と両手を合わせて志國にお辞儀をした。

それを聞いて、志國は眉間にしわを寄せる。

「それ俺じゃねぇし。俺の部下にそーいうのが得意な奴がいんの。だから俺の力じゃねぇよ」

「ふん、ならば…」

統虎の切り返しは早かった。

「その部下は今まで誰について来たというのだ?」

「……………」

統虎の言葉に一瞬固まってから、視線を上に向けて。

「まぁ…なぁ」

と考え込む志國に統虎はフッと顔を綻ばせた。


「さて、東の。そろそろ本題に入りたいんだがな。できれば傘が無くても座って話ができる場所で」

「…………ハッ、ったくおめぇは、昔のまんま変わんねぇなぁ」

「フン、昔といってもせいぜい2、3年だろう。そんなペースでコロコロと人が変わってたまるか」

冗談混じりの口調で笑う統虎に志國は、まぁな、と笑い返して統虎を基地の中へと案内するように歩きだした。

この何も変わらない旧友のせいか、はたまたこの地があの場所に似ていたからなのか。


懐かしい

はじめてきた場所なのに、なぜかそんな言葉が脳裏をよぎった。




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