1/13ページ目 昨日の天気からは考えられないほどの土砂降りだった。 車から降りて、一般の家より、明らかに大きい門の前に立つ。 来客者専用の門だ。 思っていたよりも天気が荒れたので、雨具を持って行くという報告が大いに役に立っている。 『氏名ト国名ヲ述ベ、身分ヲ証明スル物ヲ提示シテ下サイ』 門の電子パネルの声に従って名前と国名を述べた後、国家軍事同盟の身分証明書をパネルの横にあるカメラにかざした。 桜界国の技術には来るたびに驚かされる。 銀の基地本部に来るのは初めてだったが、この操作は事前に教えてもらっていたので間違うことも無く、門はあっさりと開いた。 そのまま中に入って辺りを見渡す。 すると、少し先の人工的に植えられたであろう桜の木のそばに、傘をさして立っている人影が目に入った。 「長旅ご苦労さん、統虎(とうこ)」 ニッと笑いかけた志國の代わり映えしない姿に、自然に笑い返す。 「久しぶりだな、東(あずま)の志國。元気にしとったか?」 「あぁ、部下の世話が大変だけどな。何とかやってるよ」 言いながら肩をすくめた志國に、 統虎は短い銀髪を揺らしながらククッと喉の奥で笑った。 「おい、嘘をつくな。お前は世話をされる側であろう?」 そんな統虎の茶化しに、志國はゲッとあからさまにイヤな顔をする。 「うるせぇ、これでも一応気にしてんだからな。どうせ俺にリーダーは向いてねぇよ」 拗ねたようにムスッと顔をしかめる志國。 統虎はますます喉を鳴らし、笑ったまま言った。 「そういうことじゃない。お前はリーダーとして、立派にやっとるだろうよ」 「何でそう思う…?」 「今日だって雨の報告はかなり助かった。俺は他国どころか自国の気象状態もよめんからな」 言って統虎は「感謝している」と両手を合わせて志國にお辞儀をした。 それを聞いて、志國は眉間にしわを寄せる。 「それ俺じゃねぇし。俺の部下にそーいうのが得意な奴がいんの。だから俺の力じゃねぇよ」 「ふん、ならば…」 統虎の切り返しは早かった。 「その部下は今まで誰について来たというのだ?」 「……………」 統虎の言葉に一瞬固まってから、視線を上に向けて。 「まぁ…なぁ」 と考え込む志國に統虎はフッと顔を綻ばせた。 「さて、東の。そろそろ本題に入りたいんだがな。できれば傘が無くても座って話ができる場所で」 「…………ハッ、ったくおめぇは、昔のまんま変わんねぇなぁ」 「フン、昔といってもせいぜい2、3年だろう。そんなペースでコロコロと人が変わってたまるか」 冗談混じりの口調で笑う統虎に志國は、まぁな、と笑い返して統虎を基地の中へと案内するように歩きだした。 この何も変わらない旧友のせいか、はたまたこの地があの場所に似ていたからなのか。 懐かしい はじめてきた場所なのに、なぜかそんな言葉が脳裏をよぎった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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