桜界逸史

3・春紫苑
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翌日

空雉が眼を覚ましたのは、まだ薄暗い朝の5時だった。

朝礼は7時から始まるので、まだ2時間ほど時間がある。

んー、散歩でも行くかなぁ

二度寝しても良かったのだが、それだと起きるときが辛い。

眠気覚ましも兼ねて、適当に基地内を歩き回ることにした。

制服に着替えるのも面倒だったので、ジャージ姿のまま部屋を出る。
寮棟の廊下を進んで、ロビーの前を通った。

この時間帯でも起きている隊員たちは意外に多かった。

基地内の自由に読める新聞を広げていたり、本を読んでいたりしている。

ふーん、こんな朝の落ち着いた感じは新鮮だね。

なんとなく、『早起きは三文の徳』ということわざに同意しながら、空雉は中庭へと向かった。


「ん?あれは…」

中庭の真ん中に建っている時計台の下に、誰かいる。

人数は2人。
見なれた青光りする黒髪が一人と、知らない顔が一人だ。

片方は海神だ。
もう片方は、空雉には見覚えのない女子…?

何やら親しげに話をしている。

こんな時間に、知らない女の子と親しげに話すなんて海神らしくないけど……
あ、笑った。珍しい。


2人は、しばらく話を続けた後、二人して空雉のいる方とは反対側の出口から中庭を後にした。

ふぅん、面白そうだねぇ

完全に、今の女の子は初めに思った客人の箱から移動していた。

その時は2人を追うような野暮な真似はせず、滅多に弱みを見せない海神のオモシロ情報として、しっかりと頭に記憶しておいた。




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