ごった煮ゆめ

恋心、ひとつ
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それは香りのマジック、貴方のマジック。



《恋心、ひとつ》



「お前さ。俺の事、好きだろ。」

突然、投げ掛けられたデスマスクの一言。
私の前にドカリと座り、顔を覗き込んだかと思うといきなり。

「…は?何ですか、それ?意味分かんない。」

有り得ないと顔をしかめ、私はぞんざいな返事を返すも、内心はドキドキだった。
チラリとデスマスクに視線を走らせると、ニヤニヤと笑いながら私を見てる。

来るんじゃなかった。
大人しく双魚宮で待っていればよかったのに。
兄さんに「行こう!」と押し切られて、ノコノコと巨蟹宮に来てしまったのが運の尽き。
涼しい顔を作ってはいても、高鳴る心音が聞こえているのではないかとヒヤヒヤする。

デスマスクは全てを見透かすような紅い瞳を私に向けたまま。
逸らさずジッと私を見てる。
ホンの少しの動揺も見逃さない、そんな感じで。

「で、どうよ?」
「何がですか?」
「さっきの事。」
「クドいなぁ…。」

ああ、もう!
兄さん、早く戻って来て!

一緒に巨蟹宮まで来たはいいけど、急にサガに呼ばれて教皇宮までひとっ走りした兄さん。

タイミング、悪っ!

勿論、私は巨蟹宮に置き去り。
最悪…、過ぎる…。
気付いてたから、出来るだけ近付かないようにしてたのに。

何に?
自分に問い掛ける。

勿論、この気持ち。
どこかこの不敵な笑みを零す男に、惹かれ始めてるって事。

「お前にその気があるなら、俺はいつでもOKだけど?」

目を逸らしていても、強い瞳が私を捉え続けているのが分かる。

「だから、そんな気ないって――。」

言い掛けた私の言葉を、風が遮った。
そんな気がした。

でも、実際に遮ったのはデスマスクの右手。
その手が、私の長い髪を一房掬い上げて。

「やっぱ、薔薇の匂いだな…。」

自分の鼻先まで持っていくと匂いを嗅ぎ、そして、その髪にキスをした。
その一連の動作に硬直する私。
髪へのキスは、その感触をダイレクトに身体へと伝え、生々しい刺激に震えが走る。
デスマスクの長くしなやかな指からハラハラと髪が落ち、再び私の元に戻って来るまでの間、その感触は私の心を捉えて離さなかった。

それに…。

髪を掬い上げる瞬間、デスマスクから香ってきた香水の香り。
私が彼に惹かれる最大の理由。
独特なその香り。
デスマスクに良く似合った香り。

初めて、この香りに気付いた時、私の心が動き出した事を思い出す。
常に薔薇の香りに包まれた双魚宮に現れた、明らかに異質な香り。
その時から、デスマスクを意識し始めた事。

「…どうした?その気になってきたか?」
「ふ、ふざけないで下さい!」

ああ、遂に取り乱してしまった。
これで、もう駄目だ。
何を言われても、否定出来ない。

「お邪魔しました!」

私は派手な音を立てて椅子から立ち上がると、一目散にその場から退散した。
きっと巨蟹宮のリビングでは、ニヤけたデスマスクが煙草に火を点けているに違いない。


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