SS集

「ローズデー」薔薇の小話(ディーテ)
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サーっと音がして、私の目の前を風が通り抜けた。

その一瞬に舞い上がる薔薇の花弁。

カサカサと揺れて擦れ合う、薔薇達の歌。

その光景に私は、今、通り抜けた風が確かな姿を持って、目に見えたような気がした。

「何が言いたいの?」

思わず、口に出して問う。
決して答える事のない薔薇達に。

太陽の光を遮る厚い雲の下。
陰鬱に暗い灰色の空間でも、ここの薔薇達は鮮やかな色彩を放って。

匂い立つ香気が私に訴えかけるのは、一体、何なのだろう?

「私に教えて。何が言いたいの?」

再び問えば、哀しげに鳴く。
吹き付ける風に揺られて。

赤い薔薇は悲しみを、白い薔薇は切なさを。
色の無い世界に、薔薇達だけが心を持って。

何故だか、自分の方が無機質な存在に感じられる。

「黄色い薔薇は…。」

何だろう?
黄色い色は元気とか、暖かさを与えてくれるけど、今はそう思えない。

「黄色い薔薇は、キミへのジェラシー。」

不意に背後から聞こえた声。

「…アフロディーテ。」

風よりも静かに、音もなく現れた美しい人。
この薔薇園の主。

「黄色い薔薇は嫉妬しているんだ。キミの美しさに。」

そうだろうか?
薔薇が私にジェラシー?

「私の言葉を疑っているのかい?」

分からないわ。
何故、薔薇達が私に嫉妬するのか、その理由が。

「この単色な世界の中で、キミが一番、鮮やかだからさ。薔薇達よりもずっとね。」

スッと一歩、前に出たアフロディーテが、一輪の薔薇を手折る。

「桃色の薔薇は、キミへの恋心…。」

手折ったピンクの薔薇に、軽いキスを施す。
そして、ごく自然に私の髪へ。

「似合っているよ。」

優雅な笑みの向こうに、薔薇達がざわめいている。

その一瞬、彼が一番の色彩を放った。

薔薇達が歌うのは祝福の歌か、惜別の歌か…。

私には分からずに、ただ混乱する。

いつか光に包まれたこの薔薇園で、全ての薔薇達に祝福される日が来るのだろうか?

そんな夢を見てしまう程に、彼の微笑は甘く。
薔薇達の歌は切なく、心に響いた。


‐end‐


☆☆☆


本日「ローズデー」につき、急遽、薔薇とお魚様の小話を。
メインはお魚様より薔薇だったりしますが…。

こちらは山羊のお礼に、亜玖李様へ。
ヘボいですが、どうぞご堪能下さい。

(2008.1.14)

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