1/1ﾍﾟｰｼﾞ目 切ない。 切ない、切ない、切ない。 何度繰り返したか分からない、その言葉。 胸が苦しくなる度、無意識に溜息が零れる度に、心の奥で繰り返す言葉。 切ない…。 こんな感情、十四年という短かった以前の俺の人生の中で、味わった事など一度もなかった。 苦しい事はあった、辛い事もあった。 困る事、泣きたい事、悔しい事、悲しい事も。 絶望を覚えた事もあった。 でも、この感情は何だ？ 胸の内側がモヤモヤとして、何かが喉につかえたような、曖昧ではっきりしない、この感じ。 言葉が出なかったり、変なヘマやらかしたり、いつもとはまるで違う自分。 振り払おうとしても、いつまでも抜けられない靄(モヤ)の中にいるようだ。 「兄さん、それは『恋』じゃないのか？」 「…へ？」 俺のいない十三年の間に、いつの間にやら大人になっていた弟の口から飛び出した、思い掛けない言葉。 恋、だと？ 俺が、この俺が恋をしていると？ 「違うのか？兄さんはいつもぼんやりと『あの人』を眺めているから、俺はてっきり…。」 「眺めてる？俺が？」 「もしかして、自覚なかったのか、兄さん？」 この息苦しい胸の圧迫感が『恋』だと言うのなら、昔の俺はなんて安穏とした日々を送っていたのだろうか。 ただただ怒って、ただただ笑って。 精一杯力を出し切って、目の前の毎日を全力で突っ走る、それだけだった。 それが十三年前の俺。 なのに、今の俺は感情を表に出す事すらまともに出来やしない。 何をどうして良いのか、どう言って良いのか、どんな顔をして話せば良いのか、何も分からない。 分からなくて混乱する。 切ない。 切ない、切ない、切ない。 教えてくれ、どうしたらこの息苦しさを止められる？ いつまでも、こんなに視野が狭いままなんて、女神の聖闘士として失格だろ？ そうだ、この切なさを覚えた瞬間、俺の視界は他の景色を映さなくなった。 ただ、その姿しか見えなくなった。 切ない…。 そうか。 俺は恋をしているのか。 この苦しさが、この狭い視界が、『恋』の証なんだな。 (この切なさ故に、人は惑うのか…。) 昔の俺はどれだけ暢気だったんだか…。 何も知らなかった。 知らずに生きて、そして、死んだ。 酷です、女神。 新たな『生』と共に、こんなにも苦しい『切なさ』を、俺に与えてくれるとは…。 ‐end‐ ☆☆☆ 片想い兄さん、恋に悩むの図(笑) ウチのロス兄さんはいつも余裕綽々過ぎるんで、ちょっと戸惑う兄さんに仕上げてみようとか突発的に思って書き殴りました。 相変わらず意味不明でスミマセン； ちなみに『あの人』の部分には、脳内で御自分のお名前を入れてドリーム風に楽しんで頂くほか、他キャラを当てはめてＢＬ風にもお楽しみ頂けるかと思います。 (2009.9.25) [指定ﾍﾟｰｼﾞを開く] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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