ことば

【にわか雨】





雨だなんてきいてなかった
前髪もうまくいったのに
どおりでまつ毛もあがらなかった
可愛い靴なんて履くんじゃなかった

唇にしみた雨粒は
グロスの代わりにはならないけれど
わたしを冷やすには充分で
重なる温度を欲しがった

せめてもっと強く当たってくれたら
目を瞑って逃げだせたのに
ただ弱いだけのわたしのような
皮肉めいたにわか雨



1人なんて知らなかった
暖かい場所があった
やたらと冷たい耳たぶさえも
こそばゆいキスで熱を持った

靴底にしみた雨粒が
わたしを地面に縛り付けている
こうしていてもあのヘッドライトは
もうわたしを照らさないのに

屋根のない場所でわざと
傘をさして待つのが好きだった
遅れてもいないのにあなたは
少しわたしに優しくなった



かかとを剥がしてどうにか歩いて
あの場所の横を通った
雨だなんて聞いてないよと
古びた屋根が泣いてる



せめてもっと強い濁流にのまれ
溺れてしまえたなら
あなたはわたしを心配するかな
役立たずのにわか雨

ただ弱いだけのわたしのような
嫌われものの雨









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